2015/10/14
マイナンバー制度について思うこと。メリットとデメリットどっちが大きい?
2015年10月よりスタートしたマイナンバー制度。実際の運用開始は2016年1月ですが、10月からは住民票を持つすべての人に対して一人につき1つ、12桁の個人番号が割り振られることになりました。
戦後最大の国家プロジェクトと言われるマイナンバー制度ですが、一体どんな制度なのか?何のために導入するのか?いつから始まるのか?…最近まで私もよく知りませんでした。
これは勉強不足の自分のせい?それもゼロではないと思いますが、やるんだったらしれっと始めないで全国民に冊子を配るとか政府ももっと広報してよ!と強く言いたくなります。情報が少なすぎです。
今後、私たちの生活にも大きく関わるであろうこの制度。しかし、その全容がほとんど知らされないまま始まろうとしているところに正直少々怒りを感じる今日この頃ですが、今回はマイナンバー制度の概要と導入にあたってのメリット、デメリットについてご紹介していきたいと思います。
マイナンバー制度とは?個人番号の変更は原則不可
マイナンバー制度は、住民票を持つ全ての人(全国民と外国人住民)に対して「12桁の個人番号」を割りふる制度のことです。
個人番号は一人につき1つで、基本的に生涯変わりません。ただし、12桁の個人番号が記載されたカードを紛失してしまった場合は番号が変更になります。また、個人番号が流出して不正利用の恐れがある場合など、一定の要件を満たす場合は変更が可能です。
例えば、12桁の番号が全て同じ数字「ゾロ目」だった場合は「記憶されやすく不正利用の恐れがある」として変更が認められる可能性が高いと言えます。ちなみに番号は自分では選べません(お金を払っても)。仮に「4219(しにいく)」と行った不吉な数字並びがあってもそれだけの理由では変更は出来ません。
そして、12桁の個人番号はコンピューターがランダムに選ぶため、親子・夫婦でも連番になることはありません。個人番号が記載された「通知カード」と呼ばれるカードは2015年10月中旬以降、10月5日時点の住民票の住所に順次発送されます。
※「通知カード」到着後、身分証明書の代わりとなる「個人番号カード(マイナンバーカード)」を作成するかどうかは任意です。(カード発行料は当面無料)
マイナンバー制度導入の目的は?
ではこのマイナンバー制度一体何のために導入されるのでしょうか?この制度の大きな目的は「全国民の収入を把握し社会保険料や税金の納付漏れがないかを管理すること」です。
日本ではこれまで各省庁が管轄する下記のものが個別に番号を持っていました。
- 健康保険(被保険者番号)厚生労働省
- 雇用保険(被保険者番号)厚生労働省
- 所得税(整理番号) 国税庁
- 住民票(住民票コード) 総務省
- 年金(基礎年金番号) 日本年金機構
- 戸籍謄本 法務省
1~4までは2015年10月より紐づけ、5・6は将来的に紐づけ
番号がバラバラであるがゆえに個人の所得と納税状況が把握しきれず、その結果、年金の不正受給や脱税といった不祥事が起こるため、これらの番号をマイナンバー(12桁の個人番号)と紐づけることで情報の共有、管理の一元化を図り、不正を防止しようというのがマイナンバー制度の大きな狙いとなっています。
政府はマイナンバー制度によって次のような効果が生まれると伝えています。
- カード一枚で多くの行政手続きが簡単に
- 民間利用の拡大で国民にとって便利な暮らしの実現
これだけだと利用者である国民は便利になって不公平感もなくなってハッピー!な制度とも取れなくもないですが、国が国民一人一人の情報をすべて管理するとても恐ろしい制度とも言えます。
この制度に本当に問題点はないのか?次はマイナンバー制度のメリットとデメリットを考えていきます。
マイナンバー制度のメリット
マイナンバー制度の導入で私たちが享受するメリットは大きく3つあります。
面倒な社会保障手続きの簡素化
最大のメリットは社会保障の手続きが簡単になることです。年金を例にすると、これまで年金の受給手続きを行う際に所得証明や戸籍謄本、住民票といった書類の提出が必要でした。
しかし本来、これらの必要書類は行政側にあるものです。マイナンバー制度が導入されることで私たちが書類を用意する必要がなくなります。さらに年金だけでなく国民健康保険や児童手当などの手続きも簡素化されます。お金を払って書類を用意しなくて済むのは助かりますね。
住所や氏名変更も役所への届け出で一度でOKに?!
今後マイナンバー制度の民間利用が拡大していくと銀行や保険会社、病院、電気・ガスなど、様々な民間企業でもマイナンバーが活用されていきます。
そうすると結婚や引越しで氏名や住所が変更になった場合も、役所に変更届を出すだけで全ての手続きが完了することになるかもしれません。これは手間が省けて確かに便利です。
身分証明書付万能カードの誕生!?
またこの民間利用の拡大で「個人番号カード」がクレジットカードや銀行のキャッシュカード、ポイントカードなどとして利用することが検討されており、さらには健康保険証やお薬手帳、運転免許証との統合も検討されています。
それが実現すると1つのカードで全てOK!まさに万能カードの誕生も夢ではありません。
マイナンバー制度のデメリット
ただメリットがある一方で、次のようなデメリットも存在します。
個人情報の漏えい、なりすましによる犯罪も
一つの番号にたくさんの情報が集められるため、万一番号が流出した際に個人情報が漏えいするリスクが考えられます。このため、なりすましによる犯罪や不正利用の恐れがないとは言い切れません。
現にマイナンバー制度を導入しているアメリカではなりすましによる犯罪が多発しています。知らないうちにハッカーに個人番号から銀行口座をたどられ、気が付いたら預貯金がゼロになっていたという可能性も十分あり得るのです。
日本ではこうした事例を踏まえ、不正に情報を読み取ろうとするスキミング行為に対し、自動的にカードの中の情報を消去するという対策を取っています。また、個人番号だけでなく本人確認もあわせた手続きを行うことで犯罪を防ごうとしています。
ただこうした対策はカードの中に入った情報だけに対処するもので、大元となるサーバーから内部情報を抜き取られてしまったら個人ではどうすることも出来ません。便利になる一方で実は大きなリスクも抱えていることを頭に入れておくべきでしょう。
プライバシーの侵害
今後、民間利用が拡大していくと心配されるがプライバシーの侵害です。例えば、知られたくない病気や預貯金額などが漏えいする可能性もゼロではないのです。ただ病院のカルテ情報と個人番号を紐づけることは法律で禁止されているので病歴が知られてしまう可能性は低いです。
一方、預貯金額については、銀行口座と個人番号の紐づけが義務化される日が近い将来やって来るかもしれないのでそうなるとリスクは高まります。前述したサーバーの件もそうですが、個人ではどうすることも出来ない点があるのは歯がゆいところです。
個人番号は大切に!
まだ運用が始まっていないので、実際にどれだけ便利なのか?どんなリスクがあるのか?ピンと来ない人も多いかと思います。ただこれからは職場で年末調整の際に番号を聞かれたり、確定申告の際には番号を記載する必要があるので、個人番号が身近なものになることは間違いないでしょう。
多くのメリットがある一方で、残念ながらデメリットがあるのも事実。不必要に番号を人に教えない、個人番号カードや通知カードを失くさない、まずは自分で個人番号をしっかりと管理することがリスクから身を守る方法です。